普通の2wayスピーカーを作る①
1年ぶりほどの投稿となりました。うかいです。ついに大学を卒業し、社会人となりました。
昨年は研究が忙しく、オーディオサークルの方もコロナで活動していなかったため、長いことスピーカー製作を行っていませんでした。もう今後スピーカー作ることはあまりないのかな~なんて思っていたのも束の間、友人に余ってるスピーカーユニットでスピーカーを設計してほしいと頼まれました。そこで、久しぶりにスピーカーを作ってみたいと思います。自分もスピーカーの作り方を復習できるのでいい機会かもしれません。
(余談ですが、またオーディオサークルの方にはスピーカーに興味のある新入生はいなかったそうです。そんなもんですね。)
しばらくスピーカー関連に触れていなかったこともあり、あまり凝ったことはできないので、ごく普通の2wayスピーカーにしたいと思います。平日はほとんど時間が取れないので、完成するまでには大変時間がかかると思います。このブログを読む方なんてそうそういないと思いますので、このブログのタイトル通り、メモみたいな感じで書いていければなと思います。
なろう作家のように失踪しないように頑張ります。
方針と箱容量の決定など
余っているユニットがSB AcousticsのMW13Pであること、そしてデスクの上に置きたいとの要望から、バスレフかパッシブラジエーターの小型2wayにでもしようかと思います。手元にユニットがないので、Audio Exciteから拾ってきたT/Sパラメータで検討してみます。以前自分で使ったW15CY001を測定した際、かなり似通った値になったので、参考にします。手元に来たら実測して調整を加えたいと思っています。
エンクロージャーの検討には今までwinISDを用いていたのですが、今回はvituixCADで行います。まず、初期画面上部のTool - Enclosureを選択します。次に、Add New Driverからドライバを追加します。ここでT/Sパラメータを入力します。
これを使って検討を進めていきます。
パッシブラジエーター
入手性がよいPRということでDaytonのDSA215-PRで検討してみました。
まずまず下まで伸びていますが、群遅延がちょっと気になります。
このPRを用いる場合、サイドにマウントする形になります。よく同じパッシブラジエーターを2つ対向する形で配置しているものを見ますが、あまり小口径のもので相性のよさそうなものがありませんでした。
バスレフ型
今回のアライメントテーブルはSC4を採用しています。デスク上で使う想定なので、低域を欲張らずなるべく小型にしてこんな感じになりました。
5.8 Lのエンクロージャーです。Velocityはポート内の風速?を表しているようで、表示されている薄い黄線を超えると風切り音などが発生するようです。バスレフポートの調整は向こうでやってもらおうと考えていることと、まだ拾ってきたパラメータでの検討なので、実際に作る際はこれらのシミュレーション結果からちょっと変化します。
バッフルの設計
こんな感じで適当にwaveguideをつけてみます。
なんか見にくいですね。レンダリングのうまい使い方も調べてみないと...。
少しやってみたかったことなどを織り込んでみました。オフセットなどの細かいところは試作しつつ修正を加えて詰めていこうと思います。めんどくさくなったら詰めません。
ツィーターはウーファーと同じSB AcousticsのSB26ADCにしようかと思っています。入手性がよく、特性も悪くなくて、そして特に友人に新たに買わせるのにあまり高価でないものとしたいからです。
バッフルは3Dプリンターで作ろうかなと思っています。卒業前はマシニングセンタとかを使える伝手があって、そういうのも使って最後に面白いもの作れないかなと思っていたのですが、コロナで全部流れちゃいました。
今後の流れ
バスレフを採用して製作に進みたいと思います。友人の自作スピーカーなのに私が全部やるのもおかしいので、実際の製作は向こうに投げたいと思います。ですので、次の投稿がいつになるか、そもそも完成するのかはわかりません....。
スピーカー製作ってこんな感じでいいんでしたっけ?()
自作Waveguideスピーカーの紹介とリメイク案
久しぶりの投稿です。うかいです。昨年はコロナの影響でサークル活動がすべて停止し、何も活動していませんでした。スピーカー甲子園を観客として見に行ったくらいですかね。今年もイベント(や予算)などがどうなるかわかりません。
今年の新入生の中でスピーカー製作に興味を持っている方が数名いるそうで、スピーカー講習なるものを頼まれてどうしようかと思案しているうちに、沸々と制作意欲が湧いてきました。
なんとなく1作目のスピーカーのネットワークを弄っていたら悪くない感じの特性が得られそうだったので、あまりお金を使わずにスピーカー関連の活動を行うために、今年の活動の1つの案として以前製作したスピーカーのリメイクを考えています。
まず、現状のスピーカーの紹介をします。
※ここで紹介している軸外水平方向の特性は15 °刻みでの測定データなので、listening windowやらなんやらは正確でないので、参考までに。
次回測定する時には70点頑張ります…多分…
自作スピーカー1作目
これは私が初めて作った自作スピーカーです。エンクロージャーやSEAS EXCELのウーファーをみてなんとなく察する人も多いかもしれませんが、このスピーカーは某HPに触発されて2018年の夏に製作しました。何なら、自作スピーカーに興味を持ったきっかけも同記事でした。もともとTweeterもWaveguideは採用しておらず、SEAS T25CF001を使っていました。ただ、なんとなく高域が好みに合わず、その頃Waveguideについての話題をどこかで見たのもあってWaveguideを採用し、測定治具やら機材やらを集めて自分で測定とクロスオーバーネットワーク回路の設計をやってみようと思った次第です。
使用したユニットとWaveguideは以下の物です。
Tweeter | Usher 9950-20 |
Mid-Woofer | SEAS W15CY001 |
Waveguide | Visaton WG 148 R |
ツィーターの選定理由は、確かHiFiCompassを覗いていて安価な割に特性が中々良さそうだったことと、磁性流体入りかつFsが低くて使いやすそうだったからです。
Usher 9950-20とWG-148Rは上手くマウント出来無いので、Waveguide側を少し加工しています。
特性はこんな感じです。
クロスは2 kHzのLR4で、クロス付近でツィーター側とウーファー側の軸外指向性の繋がりがスムースではありません。当時はこれ以上うまく設計できなかったので、これで完成としていました。
リメイク案(検討中)
もう少し上手いこと設計できるんじゃないかとふと思い立ち色々弄ってみたところ、2 kHzのLR2でこんな特性が得られました。
まずまずですかね...。LR2だと金属コーン特有のピークの処理が難しいです。
このマグネシウムコーンのウーファー、個人的にはかなり好みの音なんですけどね。
2019年度の理科フェススピーカーと比較するとこんな感じ。
どちらもやはりWaveguideの特性がネックです。Waveguideとバッフルに工夫を加えたりと、その辺をリメイクするというのは面白そうです。ツィーターごと変えてもいいですね。ウーファーはどうするか...
バッフルとネットワークだけ作り直すか、エンクロージャーを含めて作り直すか等思案していますが、今年の理科フェスなどのイベント(と予算←重要)がどうなるか次第という感じですね。
最近では、垂直方向の軸外指向性なんかもかなり注目されているみたいですが、この頃はそんな事は全然知らなかったので、そのうち暇があったらこのスピーカーの垂直方向の特性も測定してみたいと思っています。
また進捗が出たら記事を更新したいと思っています。(ほんとかな?)
(2021年5月29日追記)
サークルで、オーディオ機器製作に興味があるとしていた新入生との連絡が取れないみたいです。
あー...なるほどね?(察し)
2019 理科フェススピーカーについて
2019年12月8日に法政大学小金井キャンパス行われた理科サークルフェスタで、私が設計・制作した自作スピーカーの発表を行ったので、その詳細について備忘録的に書き残しておこうとおもい、ブログを新しく作り直しました。内容は大体当日配られたパンフレットと同様のものですが、原稿を消してしまうのももったいないので、ここに落としておきたいと思います。
このスピーカーは自作スピーカー歴2年目のぺーぺーな私の3作目なのでかなりつたない部分があると思いますが、温かい目で見守ってくれると幸いです(?)
明日、法政大学小金井キャンパスで行われる理科サークルフェスタに展示するスピーカーの設置が完了しました。E201教室にぜひお越しください! pic.twitter.com/f3MLizkr7k
— オーディオったー (@AUDIOTTER) 2019年12月7日
コンセプト
まず何を思ってこんなスピーカーを作ったのかというと、指向性制御に興味があったのでWaveguideとMTM形式を採用しようと考えたことから出発しました。Waveguideについては、実は私の1作目の作例にも採用しており、水平方向の指向特性の制御による定位感の向上は身をもって体験していたので、特に深く考えることなく採用が決定しました。
MTM形式に関しては、採用することで鉛直方向の指向性が制御されると聞いたので、まあなんか流行ってるみたいだし、ほかにネタもないし、採用しとくか(適当)くらいの気持ちで採用しました。
あとはウーファーやらPhase plugやらを色々足していったら冒頭の写真の物ができます。形式は密閉型です。
使用ユニット
使用ユニットは次のような感じです。パンフレットからそのまま抜粋しました。
Tweeter |
Scan-Speak D3004/660000 |
Midwoofer |
Scan-Speak 18W/8531G00 |
Subwoofer |
Dayton Audio RSS210HF-4 |
ミッドウーファーは、2Wayを作る計画がとん挫して余っていたので、かなりいいお値段がしますが、新たに2ペア別の物を買うよりは1ペア買い足した方が安いかな?ということで上記の物を選択。ツィーターは在庫処分なのかなんなのかわからないですがAmazonでやたら安く売っていたので購入。サブウーファーは密閉で使いやすそうなものをチョイスしました。
指向性制御(Waveguide及びMTM)
WaveguideにはMonacor WG-300を使用しています。有名なVisaton WG-148Rと違って入手性が非常に悪いのが難点。Ebayで購入しました。ツィーターとは海外のサイトで公開されているアダプターを3Dプリンターで作成したものを使用して取り付けてあります。
使用したミッドウーファーと合わせて使用すると、うまい具合にAcoustic offsetの補正ができて、スロープに合わせるだけで広くて深いReverse Nullができました。
ツィーター逆相接続時の位相特性も貼っておきます。
今回はDSPによるアクティブクロス(IIR)ですが、Delayは使っていません。
MTM形式についてはフィルタへの2nd order Linkwitz-Rileyの採用と合わせて鉛直方向の指向性制御を狙っています。次数が低いAcoustic Slopeの方がきれいな指向性になると海外のどこかの文献で読んだのと、せっかくAcoustic offsetの補正もしたのとでLR2を採用しました。しかし指向性に関しては本当かどうかはわかりません。実際に検証できればいいのですが、スピーカー本体を大きく(重く)しすぎて測定ができませんでした...。張り切って大型のスピーカーを作ったはいいものの、後のことを全く考えていませんでしたね。測定だけではなく、調整や写真撮影、運搬も困難だったので、気持ちとしてはもう二度と大型スピーカーは作りたくないです...
クロスは2kHzとしましたが、これはツィーターとミッドウーファーのctc距離から決めており、Waveguide径やツィーター・ウーファーの組み合わせから決まりました。今回のスピーカーではWaveguideを一部削ってユニット間の距離を近付けていますが、それもしっかり考慮に入れています。
(追記)
真似される方がいらっしゃるかどうかはわかりませんが、6600を使用する場合の注意点を一応書いておきます。
6600のフェイスプレートを外すとフェイスプレートを固定するねじの穴の周りに隙間が空いており、上記のアダプターを使うとその隙間が密閉されず、バックチャンバーから空気漏れが起きます。その状態でインピーダンスを測定すると、インピーダンスのピークが二つできてしまいますので、その隙間を何らかの方法で埋めた上で使用してください。私は下の写真のようにしました。周りの養生テープはいらないかもしれません
ただし、XT25TG30-04では問題なく使用できたので、そのまま使用できるものとできないものがあるみたいです。Heissmann Acousticsで公開されているものはそのまま使用できそうです。
Phase Plugと水平方向の軸外指向特性
Phase Plugについては、最適な形状をシミュレーションするような技術力はないので、様々な形・大きさのものをfusion360で描いた上、3Dプリンターで複数個ずつ作成し、足をミリ単位で何度も切りながら実測することで取り付け位置を決定しました。
結局一番特性が良かったのはScan-Speakのリングラジエーターっぽい形状をしたものでした。Waveguideの取り付けによって、10k~20kHzの間で大きなディップができていたのですが、それを5dB程度(たしか)改善してくれました。これもデータを残し忘れてしまったのですが、Phase Plugを外すのはそこまで困難ではないので、気力があったらそのうち測定して追記したいと思います。部屋に入れるだけで相当苦労したので、おそらくデータ残せません...。Phase Plugに関して注意点があるとすれば、形状、大きさによっては逆に特性を悪化させたものがあったことです。安易な採用は危険だということがわかりました。最終的な水平方向の軸外指向性は以下のようになりました。
ツィーター-ミッドウーファー間のつながりは極めて良好です。
床近くに配置したウーファー
YG AcousticやVivid Audioなどを参考に、ウーファーを床に近づけました。床からの反射による低音域のディップを軽減することを期待しています。が、この辺りについていまいち理解が足りていないので、勉強して理解出来たら、もしくは測定して良い結果が得られたら、もう少し詳しく追記したいと思っています。まだ使ったことがないし使い方もわからないのですが、REWを使って確かめてみたいですね。
また、本作品ではLinkwitz-Transformを用いて低域をブーストしていたのですが、当日視聴された方から低域がブーミーである、Linkwitz-Transform感があるというような意見をいただきました。これに関しては、理科フェス終了後に低域設計に関する大きな欠陥が発見されたので、LT以外に原因がありそうです...。なんのミスだったのか書いたほうがいいとは思いますが、恥ずかしいので省略させていただきます...。この記事執筆中には修正しました。
DSPによるデジタルアクティブクロス
ネットワークに関しては、基本的に回路素子ではなくminiDSPを用いたデジタルアクティブクロスオーバーとしています。なぜかというと、DSPはもともと所有していたので、素子で組むより安上がりだったからです()。IIRにしたのは、FIRを組むだけの知識が足りなかったのと、このスピーカーは後に私の家に来るので、映像と合わせて使用したいというかなり私的な理由からです。アンプは6ch分必要だったので、HypexのUcDアンプモジュールを使用しました。
その他
他の工夫点についてもいくつか紹介したいと思います。箱強度を高めるために、ほぼ全ての面の板厚を板の重ね合わせで30mm以上としています。ただし、ウーファー付近ではバッフル幅を狭めるために板厚が薄くなっていますが(厚くするとウーファーとエンクロージャーが干渉してしまうため)、角材と合板、L字型の金具や木ネジを組み合わせることで強度を保つようにしています。2way部分とウーファー部分とで箱を分離してもよかったのですが、箱容量との兼ね合いで一体型にしました。
スピーカーユニットの取り付け部には、シリコンゴムワッシャーやガスケットを用いてフローティングマウントを採用しました。ただ、フローティングマウントについて、ユニットのネジをきっちり締めようとするとワッシャーがゆがんだり外れて結局ボルトと干渉してしまったり、そうならないように余裕をもって締めるとしっかり固定できているか不安だったので、結構加減が難しかったです。また、見た目をきれいに作るのも非常に難しいので、再び採用するかは微妙です。下のウーファー部分のみに採用とかだとちょうどよかったかもしれませんね。
スピーカーの足元には伝手で金属の角パイプをスピーカーサイズに合わせて溶接してもらった専用の台座を使用しています。幅も奥行きもぴったりです。
まとめ
今回の理科フェスでは参加7大学中、なんと一位という順位をいただきました。
ただし、上記のいくつかについてもそうですが、いろいろな面で知識不足を痛感させられました。また、後先を考えずに制作に取り掛かってしまったせいで、自分が欲しい測定結果についても得ることができず、非常にスッキリしない終わり方となってしまいました。今年のこの経験を糧に、来年はさらに良いものができるよう頑張りたいと思います。(ただし現段階では全くネタがありません。)