うかいめも

自作オーディオ

2019 理科フェススピーカーについて

 

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 2019年12月8日に法政大学小金井キャンパス行われた理科サークルフェスタで、私が設計・制作した自作スピーカーの発表を行ったので、その詳細について備忘録的に書き残しておこうとおもい、ブログを新しく作り直しました。内容は大体当日配られたパンフレットと同様のものですが、原稿を消してしまうのももったいないので、ここに落としておきたいと思います。

このスピーカーは自作スピーカー歴2年目のぺーぺーな私の3作目なのでかなりつたない部分があると思いますが、温かい目で見守ってくれると幸いです(?)

 

 

コンセプト

まず何を思ってこんなスピーカーを作ったのかというと、指向性制御に興味があったのでWaveguideとMTM形式を採用しようと考えたことから出発しました。Waveguideについては、実は私の1作目の作例にも採用しており、水平方向の指向特性の制御による定位感の向上は身をもって体験していたので、特に深く考えることなく採用が決定しました。

 

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MTM形式に関しては、採用することで鉛直方向の指向性が制御されると聞いたので、まあなんか流行ってるみたいだし、ほかにネタもないし、採用しとくか(適当)くらいの気持ちで採用しました。

あとはウーファーやらPhase plugやらを色々足していったら冒頭の写真の物ができます。形式は密閉型です。

 

 

使用ユニット

使用ユニットは次のような感じです。パンフレットからそのまま抜粋しました。

Tweeter

Scan-Speak

D3004/660000

Midwoofer

Scan-Speak

18W/8531G00

Subwoofer

Dayton Audio

RSS210HF-4

ミッドウーファーは、2Wayを作る計画がとん挫して余っていたので、かなりいいお値段がしますが、新たに2ペア別の物を買うよりは1ペア買い足した方が安いかな?ということで上記の物を選択。ツィーターは在庫処分なのかなんなのかわからないですがAmazonでやたら安く売っていたので購入。サブウーファーは密閉で使いやすそうなものをチョイスしました。

 

 

指向性制御(Waveguide及びMTM)

WaveguideにはMonacor WG-300を使用しています。有名なVisaton WG-148Rと違って入手性が非常に悪いのが難点。Ebayで購入しました。ツィーターとは海外のサイトで公開されているアダプターを3Dプリンターで作成したものを使用して取り付けてあります。

heissmann-acoustics.de

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使用したミッドウーファーと合わせて使用すると、うまい具合にAcoustic offsetの補正ができて、スロープに合わせるだけで広くて深いReverse Nullができました。

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ツィーター逆相接続時の位相特性も貼っておきます。

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今回はDSPによるアクティブクロス(IIR)ですが、Delayは使っていません。

 MTM形式についてはフィルタへの2nd order Linkwitz-Rileyの採用と合わせて鉛直方向の指向性制御を狙っています。次数が低いAcoustic Slopeの方がきれいな指向性になると海外のどこかの文献で読んだのと、せっかくAcoustic offsetの補正もしたのとでLR2を採用しました。しかし指向性に関しては本当かどうかはわかりません。実際に検証できればいいのですが、スピーカー本体を大きく(重く)しすぎて測定ができませんでした...。張り切って大型のスピーカーを作ったはいいものの、後のことを全く考えていませんでしたね。測定だけではなく、調整や写真撮影、運搬も困難だったので、気持ちとしてはもう二度と大型スピーカーは作りたくないです...

クロスは2kHzとしましたが、これはツィーターとミッドウーファーのctc距離から決めており、Waveguide径やツィーター・ウーファーの組み合わせから決まりました。今回のスピーカーではWaveguideを一部削ってユニット間の距離を近付けていますが、それもしっかり考慮に入れています。

 

(追記)

 真似される方がいらっしゃるかどうかはわかりませんが、6600を使用する場合の注意点を一応書いておきます。

 6600のフェイスプレートを外すとフェイスプレートを固定するねじの穴の周りに隙間が空いており、上記のアダプターを使うとその隙間が密閉されず、バックチャンバーから空気漏れが起きます。その状態でインピーダンスを測定すると、インピーダンスのピークが二つできてしまいますので、その隙間を何らかの方法で埋めた上で使用してください。私は下の写真のようにしました。周りの養生テープはいらないかもしれません

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 ただし、XT25TG30-04では問題なく使用できたので、そのまま使用できるものとできないものがあるみたいです。Heissmann Acousticsで公開されているものはそのまま使用できそうです。

 



Phase Plugと水平方向の軸外指向特性

 Phase Plugについては、最適な形状をシミュレーションするような技術力はないので、様々な形・大きさのものをfusion360で描いた上、3Dプリンターで複数個ずつ作成し、足をミリ単位で何度も切りながら実測することで取り付け位置を決定しました。

 

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結局一番特性が良かったのはScan-Speakのリングラジエーターっぽい形状をしたものでした。Waveguideの取り付けによって、10k~20kHzの間で大きなディップができていたのですが、それを5dB程度(たしか)改善してくれました。これもデータを残し忘れてしまったのですが、Phase Plugを外すのはそこまで困難ではないので、気力があったらそのうち測定して追記したいと思います。部屋に入れるだけで相当苦労したので、おそらくデータ残せません...。Phase Plugに関して注意点があるとすれば、形状、大きさによっては逆に特性を悪化させたものがあったことです。安易な採用は危険だということがわかりました。最終的な水平方向の軸外指向性は以下のようになりました。

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ツィーター-ミッドウーファー間のつながりは極めて良好です。
 

 

 

床近くに配置したウーファー

YG AcousticやVivid Audioなどを参考に、ウーファーを床に近づけました。床からの反射による低音域のディップを軽減することを期待しています。が、この辺りについていまいち理解が足りていないので、勉強して理解出来たら、もしくは測定して良い結果が得られたら、もう少し詳しく追記したいと思っています。まだ使ったことがないし使い方もわからないのですが、REWを使って確かめてみたいですね。

また、本作品ではLinkwitz-Transformを用いて低域をブーストしていたのですが、当日視聴された方から低域がブーミーである、Linkwitz-Transform感があるというような意見をいただきました。これに関しては、理科フェス終了後に低域設計に関する大きな欠陥が発見されたので、LT以外に原因がありそうです...。なんのミスだったのか書いたほうがいいとは思いますが、恥ずかしいので省略させていただきます...。この記事執筆中には修正しました。

 

 

DSPによるデジタルアクティブクロス

ネットワークに関しては、基本的に回路素子ではなくminiDSPを用いたデジタルアクティブクロスオーバーとしています。なぜかというと、DSPはもともと所有していたので、素子で組むより安上がりだったからです()。IIRにしたのは、FIRを組むだけの知識が足りなかったのと、このスピーカーは後に私の家に来るので、映像と合わせて使用したいというかなり私的な理由からです。アンプは6ch分必要だったので、HypexのUcDアンプモジュールを使用しました。

 

 

その他

他の工夫点についてもいくつか紹介したいと思います。箱強度を高めるために、ほぼ全ての面の板厚を板の重ね合わせで30mm以上としています。ただし、ウーファー付近ではバッフル幅を狭めるために板厚が薄くなっていますが(厚くするとウーファーとエンクロージャーが干渉してしまうため)、角材と合板、L字型の金具や木ネジを組み合わせることで強度を保つようにしています。2way部分とウーファー部分とで箱を分離してもよかったのですが、箱容量との兼ね合いで一体型にしました。

スピーカーユニットの取り付け部には、シリコンゴムワッシャーやガスケットを用いてフローティングマウントを採用しました。ただ、フローティングマウントについて、ユニットのネジをきっちり締めようとするとワッシャーがゆがんだり外れて結局ボルトと干渉してしまったり、そうならないように余裕をもって締めるとしっかり固定できているか不安だったので、結構加減が難しかったです。また、見た目をきれいに作るのも非常に難しいので、再び採用するかは微妙です。下のウーファー部分のみに採用とかだとちょうどよかったかもしれませんね。

スピーカーの足元には伝手で金属の角パイプをスピーカーサイズに合わせて溶接してもらった専用の台座を使用しています。幅も奥行きもぴったりです。

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 まとめ

 今回の理科フェスでは参加7大学中、なんと一位という順位をいただきました。

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ただし、上記のいくつかについてもそうですが、いろいろな面で知識不足を痛感させられました。また、後先を考えずに制作に取り掛かってしまったせいで、自分が欲しい測定結果についても得ることができず、非常にスッキリしない終わり方となってしまいました。今年のこの経験を糧に、来年はさらに良いものができるよう頑張りたいと思います。(ただし現段階では全くネタがありません。)